余命38日、きみに明日をあげる。
もう、授業なんて聞いても意味がないと思うと、授業中もノートをとる気も起きず、ぼんやりとただ教室内を眺めていた。
あと数日で、俺がこの世界からいなくなる。……全然想像できない。
うるさい担任の小言も、しつこい陸乃進の冷やかしも、もう望んでも聞くことが出来ない。
当たり前の日常は、こんなにもあっさりなくなってしまうのか……。
ふいに、暖房がついて温かいはずの教室内の空気が冷たくなった。
俺はこの感覚を知っている。
ハッとして目を動かすと、ドアのガラス越しに、廊下にトーヤがいるのが見えた。
ガタン!!
思わず勢いよく立ってしまい、椅子と机がものすごい音を立てた。クラスメイトの目が一斉に俺に向けられる。
「佐久間、どうした」
担当教師も板書の手を止めて俺を振り返った。
「あ……具合が悪いので保健室に行ってきます」
朝から陸乃進には様子がおかしいのを見抜かれていたし、理由としては違和感はないはずだ。そのまま俺は教室を出た。