余命38日、きみに明日をあげる。
「なあ、どういうことなんだよ」
ここなら誰もいない。人目がないのをいいことに、俺はトーヤに食って掛かった。
大股で歩み寄り、フードを掴むと強引に剥いでやった。
今まで見えなかった、切れ長の尖った瞳が顔を出す。想像を裏切らない端正な顔立ちだ。
「……悪かったな」
観念したように、トーヤは言った。
「……っ。なんで嘘ついたんだよっ……!」
そんな素直に謝るなんて卑怯だ。何て言っていいかわからないじゃないか。
むしゃくしゃして、トンッと肩を押すと、俺はトーヤと距離をとった。
呼吸が乱れる。寒さは感じなくても、口からは真っ白い息が生まれる。
「なあ教えてくれ。どうしてだ」
初めから、俺の魂を取りに来たと言えばよかったじゃないか。
莉緒の願いを叶えれば延命できるだなんて、作り話までして。
「初めから、琉生の余命を伝えていたらどうしていた?」
どうしてた?
「余命を全うするような生き方が出来たか?」