余命38日、きみに明日をあげる。
トーヤの言う通りだ。
冷戦状態だった父さんとの関係も、長年こじらせていた片想いも、莉緒の願いを叶えたいと模索した時間の中で、すべて解決した。
莉緒のことを必死に考えながら、同時に俺は俺自身とも向き合っていた。
「なんだよそれっ……」
思わず笑いが漏れた。
何もせずに死んでいたら、俺は後悔だらけであの世へ行くことになっていた。
なんの後悔も未練もなく、あの世に行けるようにっていうトーヤの戦略にまんまとのせられたってわけか。
「ほとんどの人間は余命を告げると混乱する。残された時間で、後悔や未練を解消できる人間はほんの一握りだ。琉生には、倉木莉緒という強い協力者がいたから利用させてもらった」
俺はフェンスに背をつけてズルズルとしゃがみ込んだ。
冷たいコンクリートに足を投げ出して、トーヤを見上げる。
「俺は、トーヤに魂を取られるのか」
ふっ……。
おかしくもないのに、笑いが漏れてくる。
ここまでトーヤに計算しつくされていたかと思うと、もう笑うしかないだろ。