余命38日、きみに明日をあげる。
ケーキを抱え歩いて病院まで向かう。
病院近くの駅前は、いつもの休みよりもカップルたちで溢れていた。
大きなクリスマスツリーもあり、待ち合わせスポットとしては最高だろう。
寄り添い、プレゼントが入っているのか、少しお洒落な紙袋をぶら下げて。
どの顔も幸せそうだ。
そんな光景を横目で見ながら、俺はケーキの入った紙袋を大事に抱え病院まで急いだ。
面会開始時刻まで待ちきれず、病院の自動ドアの前で30分も待っていたことは莉緒に内緒だ。
「琉生!」
俺の顔を見た途端、笑顔の花が咲く莉緒。
この瞬間が、たまらなく嬉しくていとおしい。
これも今日が最後……。
一瞬、顔が歪んだが、耐えて笑顔を作った。
「メリークリスマス」
俺は、後ろ手に抱えて持ってきたケーキの箱を掲げる。
「えっ? なに?」
「クリスマスといえば、ケーキだろ」
誇らしげに言い、ベッド上の可動式テーブルに乗せた。