余命38日、きみに明日をあげる。
彼氏と彼女という関係になってから、莉緒は自分の感情を素直に表現してくれるようになったと思う。
つき合う前だったら、莉緒から俺の手を握るなんてこと絶対にありえない。
「クリスマスに彼氏手作りのケーキが食べられるなんて、私は世界一の幸せ者だね」
彼氏……か。さらりと口にされ、照れる俺。
言った張本人は照れもせず、いつものように、スマホのカメラで角度を変えて何度も写真に収めていく。
カシャカシャと何度も切れるシャッター音。
その音に口元を緩めながら、俺は持ってきた紙皿やフォークを用意する。
そのとき、あることに気づいて手がとまった。
「やべっ、ナイフ忘れた」
なにやってんだ俺。これじゃあケーキを切り分けられないじゃないか。
「ナースステーションで借りてくる?」
「いや、いいよ。フォークでつつこうぜ」
「えー、せっかくキレイなのにもったいないよー」