余命38日、きみに明日をあげる。

真実

「母さん、この目玉焼きうまいよ」

「え? いつも食べてるのと同じよ。琉生がそんなこと言うなんて、気持ち悪い」

肩をすくめた母さんは、それでも嬉しそうだ。

「ははっ、それもそうだな」

当たり前だった日常。

こんなにも愛おしくて大切な時間だったなんて。

「母さん、いつもありがとう」

「やだ、どうしたの? 今日はホワイトクリスマスかもね。うふふふっ」

なんて豪快に笑う母さんには、たくさん心配をかけたはずだ。

俺と父さんの関係がこじれた時も、どちらに何を言うでもなく見守っていてくれた。

「じゃあ、行ってきます」

これが最後になるかも……後ろ髪をひかれる思いで、俺は家を出た。


どのタイミングで俺の命が終わるのだろう。

いつもより周りを警戒し、踏み出す一歩さえ、慎重になる。

前から自転車が来れば大げさによけた。

……そんなことしたって、運命は変わらないのに。

ようやく学校の校門が見えてきたころ、
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