余命38日、きみに明日をあげる。
俺は叱られたことよりも無事に下山できたことに安心して、そこでようやく泣き出してしまった。
声を出して、わんわん泣いた。
莉緒が死んでしまったらどうしよう。本当は怖くてたまらなかったんだ。
「琉生くん、びっくりさせちゃってごめんね」
莉緒のお母さんは、俺を叱ることなく、優しくそう言ってくれた。
そのころから、莉緒の病気について、だんだんと理解するようになった。
俺の夢がハッキリ変わったのは、中学に上がったころ。
『わたし、ハタチまで生きられないんだって』
突然の、無情な告白。
それが、俺の何かを突き動かしたんだ。
こんなにも医学が発達しているのに、治せない病気が山のようにある。
でも昔は治せなかった病気も山ほど治せるようになった。
それが、医学の進歩だ。
俺一人でも医者になることで、なにかが変わるかもしれない。