余命38日、きみに明日をあげる。

あの時は、幼すぎて何もしてやることができなかったけれど、今度こそ莉緒を助けるんだって。
 
もともと、勉強は嫌いではなかったし、学校の授業だけで十分成績も上位を保てた。

それなりに真面目に勉強していたら、受験シーズンには、どこの学校にも入れると担任に太鼓判を押された。
 
なのに、俺が選んだのは決して進学校とは言えない東高。

将来パティシエになると疑っていない両親は、俺がどの高校に行くかなんて、たいして興味はなさそうだった。
 
東高を選んだのだって、莉緒が行くからそうしたんだろう、くらいにしか思っていなかったはずだ。

担任にはもったいない……と何度言われたことか。

「ねえ。莉緒休みなの?」
 
そんな声で我にかえった。
 
ホームルームはすでに終わっていて、クラスはガヤガヤと騒がしさを取り戻していた。

「あ、水野」
 
不安げな顔で俺の席まで来たのは、水野(みずの)一花(いちか)。莉緒の中学時代からの親友だ。
< 28 / 288 >

この作品をシェア

pagetop