余命38日、きみに明日をあげる。
嘘みたいな、夢みたいな話。
今でも昨日のことのようにはっきり覚えている。
トーヤとナオと過ごしたかけがえのない時間を。
莉緒は、自分の胸にそっと手を当てる。
「私の中に、死の神さんが……」
その存在を確かめるように、優しく。
「ありがとう、死の神さん……」
そっとつぶやいた莉緒を、俺は優しく抱きしめた。
鼓動が聞こえる。生きている証。
トーヤ、ありがとう。ずっと俺たちを見守っていてくれて。
今度は、俺が莉緒を守っていく。
莉緒が天使になるその日まで。
天命を全うしたときには、きっとナオが迎えに来てくれるだろう。
だから何も怖くない。
ただひたすらに、今を生きる。
「ずっとずっと一緒にいような」
「うん。ずっとずっと一緒にいる……」
桜の海の中、俺は莉緒の唇にキスをした。
END