余命38日、きみに明日をあげる。
心臓病のことを知っている唯一の友達で、日ごろから、莉緒のことを気にかけてくれている。
命の期限のことは……知らないはずだ。
「ああ、ちょっとな」
「もしかして……また発作?」
俺は、周りの目を気にしながらうなずいた。
「そっか……」
空いていた俺の前の席に座った水野。背もたれに腕をのせて、目を伏せた。
深い息から、胸の内の苦しさが伝わってくる。
だから、俺は明るく言った。
「いつもの発作だから心配ないって」
おばさんに言われたことをそっくりそのまま水野に告げた。
いつものだから、大丈夫。そんな意味を込めて。きっと、おばさんも同じ気持ちだったんだろう。
「うん」
下唇を軽く嚙み、言葉少なにうなずく水野。
そんな顔をされると、俺まで不安になってくる。
「そんな暗い顔すんなって! すぐに退院して、明日には学校にも出てくるよ」
「……だよねっ」
水野に向けた言葉は、自分を奮い立たせるためでもあった。
結局その日、進路調査票を出すことなく、俺は家に帰った。