余命38日、きみに明日をあげる。
そんな残酷なことがあるか。
それでも、俺はあきらめてない。
だってそうだろ。誰かがあきらめた時点で終わりなんだ。
──と、空気がさらにひんやり冷たくなった。
空気の流れが止まったような気がして、違和感を覚える。
ぶるるっと小さく身震いをしたとき、すっ……と、目の前に影が現れた。
気配もなく現れた人影に驚きつつも、莉緒の両親か誰かだろうと、俺は垂れた頭をゆっくり上げ──て、息をのむ。
「……っ」
目に入ったのは、全身黒づくめの男だった。
やけに丈の長いコートを羽織っていて、フードを目深にかぶっており顔がよく見えず、見るからに怪しい。
……なんだ、こいつ。
「俺は、死の神だ」
男は、抑揚のない声で言った。
「死神……?」
繰り返すと、男は毛だるそうにフッと横に息を吐いた。
「死神ではない、死の神だ」
「……は?」