余命38日、きみに明日をあげる。
男は、無言のまま窓に視線を送った。
それは、窓から入ってきたことを意味しているんだろうが、やっぱり窓はしまっている。
ということは、この男はやはり人間ではないのか?
そんなことがあるのかと考える前に、俺は口を開いていた。
「またふざけことを言いに来たんだったら、俺は聞かないからな」
「1日経過したぞ」
「……は?」
「倉木莉緒の命の期限は38日と言ったはずだ。もっとも、もう1日減ったがな」
淡々と言葉を落とす男は、昨日見た格好と同じだった。
黒いシャツに、黒いレザーパンツ。膝丈ほどもある黒のロングコートには、深めのフード。先のとがった黒い革靴。
胡散臭い、胡散臭すぎる。
いるはずのない人物が、俺の部屋にいる事実は百歩譲って現実だとしても。
莉緒の余命を口にするなんて、不謹慎も甚だしい。
そんな奴には嫌悪しかない。
顔も見たくないと、俺は目をそむけたが。
「突然こんなことを言われて混乱するのも分かる」
俺の気持ちに寄りそうなことを言われ、ゆっくり視線を戻した。