余命38日、きみに明日をあげる。
簡単に言うけれど、莉緒の願いが分からない限り、それは不可能で。
駅前のクレープを全種類食べてみたいとか、マーライオンの背中に乗ってみたいとか、どこでもドアがほしいとか。
莉緒が口にしていた願いなんて、思い浮かぶのはそれくらいだ。
それを死ぬまでに叶えたいなんて、本気で思うわけない。
いや、まてよ? 莉緒のことだからありえるかもな。
どっちにしても、それはきっと叶えられない。願うなら、もっと現実的な願いだろう。そうしたら、尚更わからない。
「何を弱気になっているんだ。お前が倉木莉緒の一番近くにいるヤツなんだろ? そのくらいわからないのか」
またバカにしたようにふんっと鼻を鳴らす男。
でも、俺にはわからない。
なんでも知っているはずだった莉緒の、知らない部分を突き付けられたような気がして、モヤモヤしていると。