余命38日、きみに明日をあげる。
「うわあっ……!」
変な奇声をあげながら、転がるように黒い物体が一つ、部屋に飛び込んできた。
俺は驚きに目を見張った。
「今度はなんだよっ!」
男のときと同じように、窓が開いた気配もない。
目の前で起こる不可思議な現象には、やっぱりまだ頭がついていかない。
「……ったく、もっと静かに入ってこれないのかよ」
「す、すみません」
あきれたようにため息をつく男に、ぺこぺこと米つきバッタのように頭を下げるそいつは。
よく見ると、男と同じ格好をしていた。
こいつも、死の神なのか? でも……。
「子ども?」
「むむっ! これでもれっきとしたレディーです!」
俺がボソリと言うと、そいつは顔を上げてフードを眉毛ギリギリまで上げた。
黒目がちの丸い瞳が現れた。