余命38日、きみに明日をあげる。
女……?
言われると、子ども……ではないかもしれないが、童顔なことには変わりない。
「もう、先輩ったら置いていかないで下さいよー。途中で迷子になっちゃったじゃないですかー」
「自分で迷子って言うくらいなら、十分子どもだな」
「先輩っ! も~、ほんとに勘弁してくださいよ~。今度の試験に合格しないと、一人前の死の神になれないんですからあ」
頬を膨らますその様は、やっぱり完全に子どもだ。
「って、申し遅れました。今度、倉木莉緒さんの魂を運ぶ担当になりました、第70番です、よろしくお願いしますっ! まだ見習いなんですけど、先輩のアシスタントとして、一緒に魂を運ばせていただきますっ」
「はあ……そんな挨拶があるか」
彼女の一挙一動を、あきれたような様子で見ている男。
たしかに、明るく宣言するようなことではない。
男にたしなめられて、彼女は気まずそうに頭をかいた。
「す、すみません~……」
そして、ポケットから手帳を取り出すと、なにかをメモしている。
その姿は、まるで、バイト先の先輩に仕事を教えてもらっているかのようだ。
上の言うことをちゃんとメモる。死の神の世界でも、同じようだ。