余命38日、きみに明日をあげる。
「そっちの世界では名前が無くても不便はないだろうけど、こっちの世界で名前がないと面倒なんだよ。お前って呼ばれるのも不愉快だし、アンタって呼ぶのも好きじゃない。だからそう呼ぶことにする。俺の名前は、琉生だ」
ナオはよっぽど名前が気に入ったのか、トーヤにまで「私のことはこれからナオって呼んでくださいよー」と催促している。
「琉生さん! 私も一生懸命お手伝いするので、莉緒さんの叶えたいこと、一緒に探しましょう!」
ナオはそう言って、俺の両手を握りしめた。
その手のあまりの冷たさに、軽く心臓が跳ねたが「あ、ああ」と返した。
空回りしている気がしないでもないが、トーヤよりナオの方が人当たりはいいし、人間に感覚も近い。もしかしたら役に立つかもしれない。
莉緒の寿命を回避できるのなら、どんな手だって使う。絶対に莉緒の願いを探し出し、叶えてやる。
「よろしく」
ナオにむかってそう言うと、トーヤが面白くなさそうにふんっと鼻を鳴らした。