余命38日、きみに明日をあげる。

「ありがとうございます」

川崎先生は私を見てうなずくと、また琉生を見て目を吊り上げた。

「今日こそ提出しないと帰さないからな」

「はいはい、分かりましたよ」
 
なんとか川崎先生をやり過ごしたあとも、琉生の顔は曇ったまま。

そっと琉生を見上げるけど、その表情からは何も読み取れない。

琉生は心を隠すのがとても上手だから。

私のことはすごく気にかけてくれるのに、琉生は自分の悩みなどを打ち明けてくれたことはない。

それが、少し悲しい。
 
調査表のことはなんとなく触れられないまま昇降口に入ると、人気者の琉生はさっそくあちこちから声がかかった。

「琉生ー」

派手な先輩が琉生の肩を組む。

絡まれている訳ではなく、ニコニコ顔の先輩の顔を見れば、可愛がられているようだ。

こうなれば、もう私に入り込む隙なんてない。

ひとりでのんびり上履きに履き替えていると、パタパタと激しい足音が近づいてきた。
< 52 / 288 >

この作品をシェア

pagetop