余命38日、きみに明日をあげる。
「ありがとうございます」
川崎先生は私を見てうなずくと、また琉生を見て目を吊り上げた。
「今日こそ提出しないと帰さないからな」
「はいはい、分かりましたよ」
なんとか川崎先生をやり過ごしたあとも、琉生の顔は曇ったまま。
そっと琉生を見上げるけど、その表情からは何も読み取れない。
琉生は心を隠すのがとても上手だから。
私のことはすごく気にかけてくれるのに、琉生は自分の悩みなどを打ち明けてくれたことはない。
それが、少し悲しい。
調査表のことはなんとなく触れられないまま昇降口に入ると、人気者の琉生はさっそくあちこちから声がかかった。
「琉生ー」
派手な先輩が琉生の肩を組む。
絡まれている訳ではなく、ニコニコ顔の先輩の顔を見れば、可愛がられているようだ。
こうなれば、もう私に入り込む隙なんてない。
ひとりでのんびり上履きに履き替えていると、パタパタと激しい足音が近づいてきた。