余命38日、きみに明日をあげる。

私の居るべき場所。  

またここに帰ってこれたことに、安堵する。

みんなには当たり前の今日も、私にとっては特別だから。

やがて、少し不機嫌そうな川崎先生が入ってきて、みんなバラバラと席につく。

不機嫌な原因は、琉生のことだろうか。

もしかして琉生は、医者になることをためらっているのかもしれない。

宣言したものの、いざ進路を決めるときになって、迷いが生まれたのかもしれない。

肘をつきながらぼーっと窓の外を見ている琉生の心の内は、やっぱり分からない。
 
ホームルームを終えれば、またガヤガヤと騒がしくなる教室。

その時。

キーンと耳鳴りがして、とたんに誰の声も聞こえなくなった。

私はここにいるのに、まるでいないような感覚に陥る。

楽しそうに笑うクラスメイト達が、知らない他人のように思えてくる。

体が小さくふるえた。
 
私がいなくなってもみんな大人になっていく。

私だけが大人になれずに置いてきぼりで。そのうち、私のことなんて誰も忘れてしまうだろう。
 
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