余命38日、きみに明日をあげる。
見た目だけで琉生を好きになった女の子とつき合うのは、正直いやだ。
ちゃんと琉生の中身を好きになってくれた人とつき合ってほしい。
歩美ちゃんのように。
「じゃあ、私戻るね」
「うん、プリントありがとう」
歩美ちゃんは、まだ赤味のおさまらない顔で、自分のクラスに帰っていった。
可愛いなぁ、歩美ちゃん。
「莉緒、それでいいの?」
そんな声に振り向けば、一花が腕組をして私を見ていた。
「なにが?」
「なにが……って。莉緒も自分の気持ちに素直になったらどうなの?」
「えー、なによそれ。私はいつだって素直だよ」
おかしなことを言う一花に、私は笑いながら自分の席に戻った。
本当は、一花の言っている意味はわかっている。
私が琉生を好きなことを、一花に認めたことはない。でもわかってるんだと思う。
「手が届かなくなってから気づいても遅いよ」
一花には、私の命の期限を伝えてない。
私が恋なんて出来ないことを知らない一花がそういう気持ちもわかる。
けれど。
一花はきっと泣くから。やっぱりそれだけは言えない。
「忠告ありがとう。でもほんとに心配されるようなことはなにもないから」
にっこり笑って言うと、一花はあいまいに笑った。