余命38日、きみに明日をあげる。
「どれにしようかな」
茶色い籐のカゴを手に取って、焼き菓子を吟味する。
フィナンシェにマドレーヌにマカロンにダッグワーズ。
種類が多くて迷ってしまうのはいつものこと。
でも、今日は無事に退院できた自分へのご褒美として買うから、ちょっと奮発しよう。
迷った挙句、マドレーヌとフィナンシェを二個ずつ取りレジに向かう。
「いつもありがとうね。莉緒ちゃんからなんてお金取りたくないんだけど」
慣れた手つきでレジを操作するおばさんは、申し訳なさそうに眉根を下げた。
「そんなっ。むしろ、二倍払いたいくらいですよ!」
「もうっ、莉緒ちゃんってば面白いんだから~」
それは嘘じゃない。こんなおいしいお菓子やケーキが、お小遣いで買えることが幸せなくらい。
はじめは「莉緒ちゃんからお金をとれない」なんて言われて、サービスをしてくれたけれど、今はちゃんと自分でお金を払うようにしている。