余命38日、きみに明日をあげる。
肩からかけた黒いエナメルのバッグの中には、制服がぐしゃっと入っているに違いない。
「琉生お帰り」
こういう偶然が嬉しくて、自然と頬が上がってしまう。
「どこ行ってたの?」
門を開けながら問いかける琉生に続いて、私もあとに入っていく。
それを不思議にも思わず、むしろ扉を大きく開いていくれる仕草に安心感を覚える。
「んー、ちょっとそこまで」
お互いの家は、何度行き来したかわからない。
まるで第2の我が家みたいだ。
「お邪魔しまーす」
私は靴を脱ぐと、慣れた足取りでリビングへ向かった。
おじさんとおばさんはお店だから、当然家の中には誰もいなくて真っ暗。
琉生が洗面所で手を洗っている間に、私はリビングの電気をつけ、カーテンを引いた。
「まるで自分ちみたいだよな」
戻ってきた琉生があきれたように言う。
「なによ今さら。でもそれはお互い様じゃない?」
琉生なんか、昔は勝手にうちの冷蔵庫まで開けていたんだから。