余命38日、きみに明日をあげる。

そんなとき、琉生のお母さんがbonheurでのお手伝いを提案してくれたのだ。

クリスマスは忙しくて人手が足りないからと。

bonheurで働けるなんて、願ってもないこと。

絶対に無理をしないとお母さんに約束し、去年の12月23日と24日の二日間、私は憧れのbonheurのユニフォームを着て接客した。

『莉緒ちゃんのおかげで大繁盛だったよ』
 
なんておじさんは言ってくれたけど、私がいなくなって完売になるのは毎年のこと。

とても大変だったけれど、すごく充実した二日間だった。

授業中はとても長いのに、働いた6時間はあっという間だった。
 
始めてもらったお給料は、もったいなくていまだに手を付けられていない。

「……いや、そういうわけじゃないけど」

口ごもる琉生。

なんとなく歯切れの悪いそれに、胸の中はいやでもざわつく。
 
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