余命38日、きみに明日をあげる。
琉生がパティシエとして働くお店で、私が接客をする夢をなんど見ただろう。
それは、琉生がパティシエになってくれないと無理だし、その前に、私はきっとそこまで生きられない。
どっちにしろ叶わない夢だ。
「いただきまーす!」
おかしな琉生は無視無視。
私は大きな口を開けて、ケーキをほおばる。
チョコレートが、口の中でとろけた。
幸せで、体中に元気がみなぎってくる。
どんな薬よりも、おじさんの作るお菓子が一番効くかもしれない。
本当は、琉生と一緒に食ベられたらもっといいのだけれど。
それが、琉生の作ったものならなおさら。
今ではもう作ってくれなくなった、琉生のお菓子が恋しい……。
「じゃ、俺はメシを食うから」
琉生はダイニングテーブルに着き、私に背を向けたまま夕飯を食べ始めた。