余命38日、きみに明日をあげる。
デート
莉緒はケーキを食べ終えると、自分の家に帰っていった。
そのとたん、電気や暖房が消えたかのように、寒く寂しくなるリビング。
ケーキの包み紙さえも丁寧に持ち帰り、跡形もなく消えたbonheurの存在。
ケーキ皿とティーカップは荒い終わり、もう棚の中。
莉緒はいつも、自分で使ったものはきちんと片付けて帰る。
そのままでいいと言っても、必ず。
俺がお菓子作りをしなくなってどのくらい経つだろう。
さっきまで、ケーキが置かれていたテーブルに目をやりながら物思いに耽る。
医者になりたいと父さんに宣言してから、一緒に菓子作りをすることもなくなり、店からも自然と足が遠のいてしまった。
去年のクリスマス、父さんの店で莉緒がバイトをした時も、働いている姿を見たかったくせに、変な意地があって結局行けなかった。