余命38日、きみに明日をあげる。
いや、俺の大事な莉緒の魂を取ろうとしているんだから、敵に決まっている。
うっかり、仲間意識なんて芽生えたら終わりだ。
「琉生さん、わたし、思いついたんですよ!」
ナオは興奮しながら俺のそばに寄ってきた。
俺より年下なんだろうか。
初めに見て思った通り、童顔なその瞳は中学生くらいに見える。
「なにを……?」
敵だと思っているのに、その無邪気な顔に、俺はあっさり返事をしていた。
「今度の日曜日に、モデルのサクラさんが写真集発売記念イベントを、都内の書店でやるみたいなんですよ」
「サクラ?」
「莉緒ちゃんが好きなモデルさんですよぉ! 死ぬまでにやりたいことのひとつに、"サクラさんに会ってみたい"が入っているかもしれないじゃないですかー」
確かに、莉緒はモデルのサクラのファンだ。
まだ10代のモデルだが、CMやドラマにひっぱりだこで、テレビで見ない日はない。
莉緒は駆け出しのモデルのころからファンらしく、部屋にもポスターが貼ってあったはずだ。