余命38日、きみに明日をあげる。
上を見上げれば寒々とするが、人々の格好は冬支度が進みとても暖かそうだ。恋人たちの密着度も高くなっている。
俺の隣で無防備に揺れる莉緒の手。
時折腕が触れ合うものの、恋人じゃない俺たちの手が繋がれることはない。
すれ違った恋人たちの手元を見て、莉緒の手を見て……。
……ダメだ。俺たちは幼なじみ。この関係が壊れるくらいなら、肩が触れ合う距離で我慢しなくてはならない。
「ねえ、どこに行くの?」
さっきから何度もたずねられているセリフ。
莉緒が不思議がるのも無理はない。
俺は人混みが大の苦手で、テレビの映像で都会の人込みを見るだけでも顔をゆがめてしまうからだ。
思えば、莉緒と一緒にこんなところに来たことはない。
俺の袖を引っ張りながら聞いてくる莉緒に、
「もうすぐつくから」
含みを持たせながら言うと、「えー、」と頬をふくらませながらも、それでもついてくる。