余命38日、きみに明日をあげる。

車が走り去ると、ようやく我に返ったみたいだ。

「どーしよー!」

写真集を胸に抱えながら俺を見上げる莉緒の目には、涙が浮かんでいた。

「サクラちゃんと握手しちゃった!!」

トークショーの時より明らかに興奮していて、俺は少し心配になる。

きっと、心拍数だって跳ね上がっているはずだ。でも。

「琉生~、ありがとう~。琉生が連れてきてくれたおかげだよ~」

なんて腕をとってぴょんぴょん飛び跳ねられれば、俺の口元も自然にほころんだ。

「よかったな。莉緒の普段の行いがいいからだよ」

今は莉緒が喜んでいることが一番だ。

ぽんぽんと頭に手を置いて、ふと顔を上げると、黒い人影が動いた。ナオがこちらに向かってピースしていた。
 
……ナオのヤツ。

これは、ナオの計らいなのかもしれない。

「どうしよ~。私もうこの手一生洗えないよ~」
 
こんな心の底からの莉緒の笑顔を見るのはいつぶりだろう。
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