余命38日、きみに明日をあげる。

「生きてたら、いいことってあるんだよね」
 
しみじみとつぶやく莉緒に、胸がぎゅっと痛くなった。

「ああ、そうだな」

そうだ。莉緒はこれから先何年も生きて、もっとたくさんのいいことに出会うんだ。

そんな思いで、莉緒の横顔を見つめた。

トーヤの言っている寿命なんて……くそくらえだ。

「寒くなってきたし、帰ろうか」

路地から大通りを見ると、もう街灯には明かりが灯されていた。

クリスマス仕様なのか、寒々しい木には電飾がまかれ、昼間よりも煌びやかな世界になっている。

「うん」

満足げな莉緒に俺も満足して、大通りに向かって足を進める。

「私、今日この写真集抱いて寝るんだ!」

「やめとけよ。よだれでべちゃべちゃになるから」

「も~、私はよだれなんて垂らさないもん!」

「どうだか」

そんなたわいもない話をしながら、青信号に変わった横断歩道を渡ろうと足を一歩前に出した時。
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