ありきたりの恋の話ですが、忘れられない恋です

「どうしたの?」

「えっ、あのね、やっぱりママ達と一緒に行こうと思って」

あらあらと微笑む結菜ママと、「体だけは大きくなったのに、まだ子供ね」と言いながら、嬉しそうなママ。

ごめんなさい…やっぱり、今はまだ1人だと晶兄を前にして平静でいられる自信がないからだった。

彼から逃げる際にちらっとこちらを見た気がしたが、気がついただろうか?

式が始まるまでには、絶対に、この落ち着かない心を戻さなければと決意する。

母達のヘアメイクも終わり、親族控室に行くには3人でロビー前を通らなければならず、2人の後ろに隠れるようにして歩いていくと、目を引く男を母が見つけた。

「あら、晶斗君、今日は来てくれてありがとう」

「本日はおめでとうございます。お天気も良く、素敵なお式になりそうですね」

「ほんと、いいお天気でよかったわ。晶斗君に会うのはしばらくぶりだけど、相変わらずかっこいいわね」

(ママったら、おばさん丸出しで恥ずかしいから…)

「叔母さんも、変わらず綺麗ですね」

「もう、おばさんを褒めてくれるのは晶斗君ぐらいよ」

年甲斐もなく、嬉しそうな声にイラっとなる。

「こちらは?」

「あらあら、ごめんなさい。結菜ちゃんのお母さんよ」
< 14 / 73 >

この作品をシェア

pagetop