ありきたりの恋の話ですが、忘れられない恋です
「どうしたの?」
「えっ、あのね、やっぱりママ達と一緒に行こうと思って」
あらあらと微笑む結菜ママと、「体だけは大きくなったのに、まだ子供ね」と言いながら、嬉しそうなママ。
ごめんなさい…やっぱり、今はまだ1人だと晶兄を前にして平静でいられる自信がないからだった。
彼から逃げる際にちらっとこちらを見た気がしたが、気がついただろうか?
式が始まるまでには、絶対に、この落ち着かない心を戻さなければと決意する。
母達のヘアメイクも終わり、親族控室に行くには3人でロビー前を通らなければならず、2人の後ろに隠れるようにして歩いていくと、目を引く男を母が見つけた。
「あら、晶斗君、今日は来てくれてありがとう」
「本日はおめでとうございます。お天気も良く、素敵なお式になりそうですね」
「ほんと、いいお天気でよかったわ。晶斗君に会うのはしばらくぶりだけど、相変わらずかっこいいわね」
(ママったら、おばさん丸出しで恥ずかしいから…)
「叔母さんも、変わらず綺麗ですね」
「もう、おばさんを褒めてくれるのは晶斗君ぐらいよ」
年甲斐もなく、嬉しそうな声にイラっとなる。
「こちらは?」
「あらあら、ごめんなさい。結菜ちゃんのお母さんよ」