ありきたりの恋の話ですが、忘れられない恋です
披露宴は、その後滞りなく終わり、友人同士で二次会が行われる。併設されているオーベルジュに人の流れが向かう一方で、うちの父は、披露宴最後の挨拶で精魂尽き果てたらしく、ロビー内のソファに座りぐったりとしている。その横で結菜ちゃんのパパは、娘から両親への手紙で大泣きしてから今も涙が止まらないようで、鼻を啜り、まだ出る涙を拭ってはため息をつく姿は、娘が大好きなんだなぁと微笑ましく思う。そして、少し離れた場所で母達は、肩の荷が降りたかのように、にこやかに談笑した後、さっさと黒留袖を脱ぐ為に更衣室を借りに行ってしまった。
残された私は、父達と一緒にいるものの、会話にならない。大きな窓からは、素敵な庭が見え横のドアから外へ出れるようだ。少しだけならと庭を散策することし奥へと歩いて行くと、背丈ほどの柵に囲まれた池があり、噴水から水が吹き出る様子を眺めていた。
「ノンちゃん」
振り向かなくてもわかる声に、一気に動揺して、心の声がヒェーと叫んでいる。逃げられないと悟り、落ち着き払ったふりをして、振り返る。
「二次会に行かないの?」
「うん。ノンちゃんと話す方が大事」
何の話をするつもりなのだろう?
距離を詰めてきた彼は、柵を掴み身動きできないように囲んできた。