ありきたりの恋の話ですが、忘れられない恋です
(ち、ちかい)
ヒールを履いているせいで、彼の顔がすぐそこにあるし、男性に壁ドンならぬ柵囲いに戸惑い、ドキドキと心臓が速く鼓動をたてる。
「ノンちゃん、きれいになったね」
突然、好きな人に褒められて、頬が熱くなるのがわかる。
「…あっ、ありがとう。でも、ほら、今日は…プロのメイクさんに綺麗にしてもらったから、いつもの何割か増しにそう見えるだけだと思う」
「それを抜きにしても、ノンちゃんは、きれいだよ。僕の知るノンちゃんは、オシャレよりも、部活に一生懸命になる女の子だった」
「…どうせ、女子力が低かったですよ」
晶兄の毒吐きに、思わず昔のようにベーと舌を出していた。
「フッ、そういうところは変わらないな…3年も、何やってたんだろ」
腰を屈め私の肩に頭を乗せる晶兄に戸惑いつつ、晶兄の毒吐きにムッとなる。
「…ごめんね。3年も何も成長してなくて!でも、晶兄に迷惑かけるような事はしてないし、私は、私で頑張ってきた。(晶兄を忘れようと頑張ってきたよ。まだ忘れられないけど)晶兄に、そんなこと言われる筋合いない」
突然、怒る私に驚いた彼は、私の両肩を掴んで、焦った表情しているが、そんなこと知ったことじゃない。
彼の言葉に傷ついたのはこちらの方だ。
掴んでいた腕を両手で振り払い、その場を後にしたが振り返り、追いかけてこない晶兄に心がざわざわと苛立っていた。