ありきたりの恋の話ですが、忘れられない恋です
みんなですか⁈
いったいどんな内容で心配されているのか…
「可愛いなんて褒めてもらっても、ほんと何もないですよ。ただ、友達と久しぶりにご飯を食べに行くだけですから」
「ほんとかしら?」
「本当に久しぶりの友達と出かけるので、気合い入れてしまったんです」
「そのお友達って、男でしょ⁈」
もう、しつこいな…
「女です。さぁ、仕事しましょう」
小倉さんは、まだ何か言いたそうだったけど、無視して仕事に取り掛かった。
今日は、大学の時の友達にお願いして、合コンに混ぜてもらうなんて絶対に言えない。言ったら、明日出勤した時には、出水支店の全従業員に知られてしまうからだ。
知られたからとなんだというのだと思うだろうが、そうなった彼女は、根掘り葉掘りと聞き出すまで諦めない。そして、大きく話を盛り広げてしまう。
彼女の犠牲者が何人もいるので、要注意人物なのだ。
それなのに…だ。
なぜこうなった⁈
業務を終えた6時過ぎ、いつものように誰もいなくなる事務所を締めて、私達は、店内にいる社員に声をかけてからお客様出入り口から外に出た。だが、そこにいるはずのない人が壁に寄りかかって立っていて、思わず後退りかける私の腕を小倉さんが掴んでいた。