ありきたりの恋の話ですが、忘れられない恋です
「篠原さん、あそこに立ってる男性、イケメンよね。目の保養だわ。あら、こっちに歩いてくるわ」
きゃ-きゃ-とはしゃいでいる小倉さんに、腕を叩かれている間に、距離を詰められていた。
「ノンちゃん、お土産届けにきたよ」
はい?
晶兄がいることに驚き、彼が何を言っているのか理解が遅れた。
「……お兄のお土産?」
「そう、淳弥に頼まれてね」
「いやいや、わざわざ晶兄が持って来るのおかしいでしょ」
「淳弥から俺が持って行くって連絡なかった?」
あっ…あのメール。
お兄め…肝心なところを抜かして連絡してくるなんて、後で文句言わなくっちゃ!
隣で興味津々に私と晶兄を交互に見ている小倉さん。
ハッと気がついて、変に勘ぐられる前に彼女と別れなければと焦る。
「あ、小倉さん、お疲れ様でした」
普通の人なら、お疲れ様でしたと帰るのだろうが、中々その場から帰ろうとしないのが彼女だ。
「篠原さんのお兄さんですか?私、同僚の小倉と言います。私と10歳も歳が離れてるんですけど、妹さんの方がしっかりとしてらっしゃって、頼りっぱなしの私とも仲良くしてくれてるんですよ」
仲良くないでしょう!
同僚としての範囲内の付き合いですとは言えず、苦笑いする。