ありきたりの恋の話ですが、忘れられない恋です
完璧に私の兄だと勘違いしている小倉さんは、晶兄に興味を湧いたようで、アピール力が凄い。
大きな目で上目遣いにぱちぱちと瞬きをして、にこりと微笑んで晶兄から何か言ってもらうのを待っている。
「私、海堂と申します。望愛さんとは、ご両親公認の仲でして妹ではありません。今日は彼女に用事があって会いに来ただけです。関係のないあなたのお話を聞きに来たわけでないので、もうよろしいでしょうか⁇」
外面良くにこりと笑い、小倉さんがあ然としてるなか、私の手を掴み「では、失礼します」と歩き出した。
えっ、えっ、ちょっと待って…
ツッコミどころが沢山あるんだけど…
振り返り小倉さんを見ると、いまだに信じられないという表情をしていた。
あー、絶対、話を盛られて噂話が広がると、首を垂らした。
「ノンちゃん、乗って」
少し離れた駐車場に止めていた車の助手席のドアを開けて、乗るよう促されるが、このまま流される訳にいかない。
この後、私には大事な用事が待っている。
「待っててくれてたのに悪いけど、私、この後、友達と会う約束をしてるから、お土産だけもらうよ。折角、ここまで来てくれたのにごめんね。お兄に、晶兄を使うなって怒っておくから、気をつけて帰って」