ありきたりの恋の話ですが、忘れられない恋です
「篠原さんより、私の方が女子力高いのに…女として見てもらえないなんて、悔しくて…昨日眠れなかったのよ」
怒りのポイントがそこ…
頬をひきつりつつ、苦笑する。
「あの後、彼と出かけたの?」
「いえ、友達と約束していたので、お土産を受け取っただけですよ』
「えっ、そうなの⁈彼の車に乗って帰るの見かけたから、てっきり…」
顎に人差し指を立て勘違いだったかしらと、わざとらしいポーズ。
ずっと見てたんですね!
「途中まで送ってもらったんです」
「そうなの⁈でも…」
まだ何か言いたそうにしていたが、朝礼の時間となり朝のスタッフが集まってきて、口を閉ざした。
本日のそれぞれ部門の仕事の割り振りを確認した後、店長から一言があり始業となる。
事務所に戻り、まだ何か言いたそうに見てくる小倉さんに、気がつかないふりをしてパソコンを起動させた。
すると、彼女もそこは分別があり、きっちりと仕事を始めてくれる。
キーを打つ音と電卓を打つ音が、お昼まで続くのはいつものことで、各々のタイミングでご飯休憩を取るのだが、耐えられなかった小倉さんは休憩に入ると同時に、キャスター付きの椅子に座ったままで隣に移動してくるなりの一声。