ありきたりの恋の話ですが、忘れられない恋です
あははは…と笑って逃げていく2人の背。
遠くからチラ見している何人かのスタッフをじろっと見つめ返したら、気まずそうに目を逸らされた。明日は小倉さんに注意しなきゃと憤慨しながら、DVDを棚に戻すのだった。
今日は、土曜日ということもあり、返却処理を終わらせて戻ると、レジカウンターは人の列をいくつも作っていた。
「篠原さん、悪いけどレジに入ってくれる?」
ちょうどスタッフの入れ替えのタイミングと人が混み合う時間帯のようで、人手が足りずどこからか声がかかる。
ブック販売のレジカウンターに2人、そして、レンタルのレジカウンターもセルフレジ3台では足りないようで、ひとりで対応をしているスタッフのヘルプにつくことにした。
「お待たせしてます。こちらへどうぞ」
カウンターに立ち、お客様の対応をして30分ほどで落ち着いた。
「ありがとうございます。助かりました」
アルバイトスタッフの男の子が、一息つくタイミングでお礼を言ってきた。
「いいのよ。あの列を1人でなんて大変だもの。もう、落ち着いたわね。後は任せても大丈夫?」
「はい、もうすぐ店長が入ってくれると思うので」
「じゃあ、お願いします」