ありきたりの恋の話ですが、忘れられない恋です
その唇にチュッと音を立てて触れた唇は、物足りなさを残して離れてしまう。
つい、「あっ」と出てしまった私の声に、彼はクスリと笑い「明日も会いに来るよ」と帰っていった。
それからというもの短い時間の為に、隣県から高速を使い1時間弱かけて会いに来るようになった彼を拒めない私は、小倉さんが流した噂のせいで同僚の目が気になり、仕事先まで来ないでほしいと頼んだことで、彼は私のマンションの駐車場で待つようになった。
彼が勝手に来て待ってるだけなのだからと、合鍵は渡していない。
でも、鞄の中には用意されているスペアキー。
マンションの駐車場に彼の車を見つけ近寄ると、助手席側を軽くノックし、ドアを開けて座る。
「お疲れ様」
「晶兄もお疲れ様」
ほぼ、この1ヶ月、会いに来なかった日は数えるほどで、会う度に彼との時間が当たり前になっている。
座席に座るなり、抱きしめられて軽いキスを繰り返し、好きだとか愛の言葉はない代わりに、会えなかった
時間の寂しさを埋めるように言葉もなく手を繋いで寄り添う。
キス以上踏み越まないように、しばらくしたら、近くのコンビニまで指を絡めて一緒に歩く。途中、甘く手のひらをくすぐられる度、お互いに甘ったるい笑みを浮かべ、私の心は好きだという気持ちが膨れるばかりだ。