ありきたりの恋の話ですが、忘れられない恋です

ううんと首を左右に振ると、呆れたようにため息をつき、物言いだけな鳴海の視線に言い訳をする。

「だって、付き合ってもないし、ただ会いに来て話を少しするだけだよ。別れ話も何もないよ」

疑いの眼差しを向けてくる鳴海

「手を繋ぐ仲なのに、何もないって言わせないよ」

「…うっ、キスまで」

小さな声だったが鳴海にはしっかりと聞こえていたようで、ほらねというように流し目をうけた。

「なら、身体の関係を持つ前に別れること。あいつとエッチしたら離れられなくなると思うよ」

しみじみとした感情がこもっていた。

経験のある鳴海は、そんな恋をしてきたのだろう。

キスしただけでも別れ難いのに、彼の肌の温もりに包まれたら、私は不毛な恋だとわかっていても、もう別れられなくなるのだろう。

だから、心を切り離すなら、まだ間に合うところに感情が止まっている今しかないのだ。

しばらくしたら男性陣数人と鳴海と同僚が集まり、4対4の合コンが始まった。

鳴海の言うように、見た目も身なりも素敵な男性陣が集まっている。

公務員という彼らのスーツの中身は、細マッチョという言葉がふさわしい体躯をしているとみえる。
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