ありきたりの恋の話ですが、忘れられない恋です
がっしりとした肩と胸板から見るに、デスクワークばかりが仕事ではないと推測された。
ただ、彼らの印象はそれだけで心惹かれる人はいないせいか、彼らの名前を覚えれないでいた。
その中の1人、男性側の幹事が、私をジッと見ているのが気になりつつ、それなりに楽しく会話が弾んでいく。
が、私1人、心がどこかへ行ってしまう。
晶兄なら…と、比べているのだ。
そんな私に気がついた鳴海からの肘鉄を何度ももらい、その度に、わかってるって、目で合図を送るを繰り返していた。
「ねぇ、望愛ちゃん、淳弥の妹でしょ?」
さっきから、度々私に視線を向けてきていた男性が、話してもいない家族の名前を出してきたことに、驚かされた。
「…えっ、兄を知ってるんですか?」
「君が小学生ぐらいの時、よく家に遊びに行ってたんだけどな」
てことは、高校の先輩でもあるのか。
意外と世間は狭いなぁと思う。
家に遊びにきていたうるさい集団の顔なんて覚えていない。晶兄以外は目に入っていなかった。
「覚えてないです」
「淳弥の結婚式にも出席して、友人席にいたんだよ。晶斗の横に座っていたの俺なんだけど、覚えてない?」
晶兄の名前がでてドキリとしたが、視界にも入っていなかったとは言えずに首を左右に振った。