ありきたりの恋の話ですが、忘れられない恋です
晶兄から離れる決意をしたからには、そう言われて帰るわけにはいかない。
首を左右に振り拒絶した。
「のあ、帰るぞ」
かなりお怒りだとわかる低い声に、反応して帰ろうとした私の手を鳴海が掴んできた。
「おい、のあは連れて帰っていいよな」
私の空いてる手首を掴んでいた鳴海は、晶兄の迫力に手を離してしまう。
「晶斗、その子俺の彼女なの。脅さないでくれる」
「知るか。俺の女じゃない」
「うん、そうだね。でも、好きな子を守りたいと思うのはお前も同じでしょ」
「わかったよ。のあを連れて帰っていいか?」
晶兄の迫力からまだ立ち直れていない鳴海は、コクリと頷くだけしかできないらしい。
「のあ」
今度は、動けないでいる私を催促してくる声は、戯れていた。
「すみません、お先に失礼します。鳴海、ごめんね」
折角、鳴海がセッティングしてくれた合コンを途中で帰ることと、結局、晶兄とは離れられないと気がついてしまったことへの謝罪だった。
「ううん、晶斗さんとちゃんと話しておいで」
そう言って送り出してくれた。
彼の背に話しかける雰囲気ではなく、強く腕を掴まれたまま大人しくついて歩くが我慢の限界だった。