ありきたりの恋の話ですが、忘れられない恋です
時計をちらっと見た晶斗。
あー、もうそんな時間なのだと毎回思う。
「帰りたくないな…このまま朝までいたらダメ?」
可愛く甘えてもダメなものはダメだ。
最低限のケジメは、彼を必ず家に帰すこと。
「ダメ。ほら、準備して」
「…わかったよ。こんな生活早く終わらせて、のあと一緒に暮らしたい。そうしたら、ずっと一緒にいられる…」
彼の家庭内の話は聞くのが怖い私は、あえて尋ねないでいる。
夫婦仲は、上手くいってないような口ぶりだが、どこまで信じたらいいのかもわからない。後で傷つくぐらいなら知らない方がいいこともある。
スーツを着た晶斗は、気怠げに首を回した後微笑んだ。
「明日、また来る」
最近、なんだかとても疲れてるように思うのは、わざわざ私の元まで通っている所為ではないだろうかと思っている。
「気をつけて帰って…ねぇ、無理して毎日来ないでもいいんだよ」
「どうしてそういうこというかな⁈のあは俺に会いたくないの?」
「会いたいよ。だけど、疲れてる顔見たらワガママ言えない」
「いいんだよ。のあを抱けば朝には疲れなんてなくなってる。だから、そんな顔するな…心配するなら、朝まで帰すなよな」
クスリと苦笑いして、「おやすみ」と唇に軽いキスをして晶斗は渡した部屋の鍵を使用し、ドアを閉めて出て行くのだ。