ありきたりの恋の話ですが、忘れられない恋です
「…うん。奥さんと上手くいってない感じだけど、聞いちゃいけないと思ってるから、どんな人なのか知らない。この先どうなるかわからないけど、晶斗の側にいられるなら、不倫でもいい。お兄が知ったら、激おこだろうけどさ」
「私はね、望愛には、幸せになってほしい。できたなら、奥さんとのことをきちんと解決してから、付き合ってほしかったよ。でも、望愛がそれでいいなら、もう何も言わない。辛くなったら岩岡屋の焼肉を食べながら愚痴を聞いたげる」
「えー、それは高くない⁈せめてチェーン店の焼肉屋にしてよ。でも、ありがとう」
鳴海なりの励ましにおどけてから、笑った。
「で、そちらの方はどうなったのかしら?鳴海さん」
「聞く?」
「もちろん」
鳴海の彼、藤城 修平さんは、お兄と晶斗の高校からの友人だという。
まぁ、それはあの日に確認してるので、どうでもいい話だったが、話の出だしに必要だったのだろうと聞き流した。
「実は、数ヶ月前に電車の中で痴漢にあった」
「えっ、聞いてないよ」
「言ってないもん。でね、たまたま乗り合わせていた修平くんが、怪しい男だなぁって見てたんだって。そしたら、私がその男に痴漢に合ってるのに気がついてくれて助けてくれたんだ」