ありきたりの恋の話ですが、忘れられない恋です
頬を染めボソッと呟きながら、鳴海は気まずい顔で目を逸らした。
「ごちそうさま…惚気でもう、お腹いっぱいだわ」
その後は、愛しい人の元にお互いに帰って行った。
鳴海との楽しかった日の翌日、いつものように仕事をこなしていた。小倉さんとは例の一件以来、私の方は今まで以上に距離を置くようにしているが、彼女の方は、特に悪びれる素振りは見当たらない。
今までと変わらずに接してくる態度が腹立たしいが、今は、あの噂も落ち着いてスタッフには誤解だったとわかってもらえたようだ。
まぁ、今はあの噂も本当になってしまったけど…
そう思いながら、仕事を終えて帰宅した。
今日は、晶斗は都合で来れないと昨夜聞いていたので、家までの足取りは重い。
晶斗といる時間が増えるたびに、1人になると寂しくて恋焦がれる自分がいる。
彼を待つだけの生活を選んだのは自分だから…
彼の温もりを知ってしまったから…
会いに行きたくても会いに行けないから…
つらい。
とぼとぼと歩いてマンション前まで来ると、見知らぬ女性がこちらをジッと見ている。私に似た顔立ちなのに、その目は、狂気をはらんでいるように鋭く、恐ろしい。
ツカツカとヒールの音を立てて、私の前に立った。