ありきたりの恋の話ですが、忘れられない恋です
降りてきた警察官が、晶斗の奥さんを私から引き離していく。
興奮してる彼女に何か言いながら、パトカー内に誘導している姿をボーと見つめるしかできないでいる。
「望愛ちゃん…大丈夫?」
そこで初めてもう一人警察官が立っているのだと気がついて、それが藤城さんだった。
「あっ、はい」
「悪いけど、君も乗ってくれる?ただ、事情を聞くだけだから心配しないで。後で晶斗にも連絡しておくよ」
私と逢瀬を重ねていても、彼は奥さんも抱いていたのだという事実を聞かされて、ショックを受けている。
言われるままパトカーに乗り、不倫の代償の大きさに胸が痛んで苦しく呼吸がままならない。
過呼吸だと慌てて対応してくれた藤城さんだったが、これは私が一つの命を奪った報いなのかもしれない。
彼の側にいられないと強く思った。
事情聴取を取られ、頬を叩かれた私は被害者であり加害者でもある。
大袈裟にしたくないと訴えて、それぞれ帰宅することになる。
彼女の迎えは、晶斗だった。
奥さんの肩を抱き並んで歩く後ろ姿に、不毛な恋でしかなかったのだと悟った私は、晶斗と別れる決意をした。
そんな私を迎えに来てくれたのは、鳴海だった。