ありきたりの恋の話ですが、忘れられない恋です
『お兄』と言えば、べーと舌を出してくる姿が憎たらしく、こちらもベーと舌を出した。
『わかってるもん。でも、息抜きって必要でしょ』
『息抜きに2時間もゲームをしたら、きっと勉強ははかどるよね。明日のテストが楽しみだね』
うっ…性格悪。
話に気を取られ油断していた。TV画面では、晶兄が操作する車から道路にバナナを撒いていき、それにタイヤを滑らせスピンした私の車を唖然と見ていた。
『やったー、1番』
そして、晶兄に続いてお兄まで私を抜いてゴールする。
『罰ゲーム何がいいかな?』
いつもなら、1位がビリにデコピンなのに…何にしようかと顎に指を添えて考えだす。
『デコピンでよくない⁈』
『それじゃつまらない。うーん…明日のテストで50番内に入るっていうのにしよう』
『無理だよ。私、300人中の真ん中ら辺の成績なんだから、無理に決まってる。高校は、部活で行くし、普通でいいもん』
『やってもいないのに、無理って決めるなんて…ノンちゃんにはガッカリだよ』
晶兄の冷ややかな視線と、面白がっているお兄の視線に、私はムッとしたり、焦ったりした。
『…わかった。頑張ってみるけど、50番内に入らなくても、ガッカリしないでよね』