愛は知っていた【完】
第一章 雪解けの季節に芽吹く
英 輝雪(はなぶさ てるゆき)は私にとってかけがえのないお兄ちゃんだ。

性別の違う年子というのが逆に喧嘩を招く要因から二人を遠ざけていたのか、私達英兄妹は近所でも評判になるほど仲睦まじい関係であった。
毎晩一緒にお風呂に入って体の洗いっこをしたり、一緒の布団で寝る前に他愛もない話をいっぱいしたり。
小学校中学年辺りまでは両親や親戚から微笑ましいことだと見守られていたが、流石に中学生にもなってこれが続いているのには不安を覚えたのか、両親からは「そろそろ止めなさい」と心配されたし、友人らに話せば「それはちょっとおかしい」と苦笑いされていた。でも私がその日常を変えることは決してなかった。

なぜならお兄ちゃんが大好きだから。例え病的だとか異常だと罵られても、度の過ぎたブラコンだと嘲笑われても、なるだけお兄ちゃんと一緒にいたいから。
もちろんそれは家族愛によって生まれた揺るぎない絆で、そこに異性としての特別な意識は無かったのだ。
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