愛は知っていた【完】
「白井先生と何をしていたんだ」


そうやって言い聞かせていたのに、なのにどうして俺は未だに朱里に干渉しようとするんだ。

先程やけに帰りが遅い朱里が心配になって携帯に電話をかけたのだが、あろうことが電話の向こうから聴こえてきたのは白井先生の声だったのだ。
それが気に掛って放っておくわけにはいかなくなった俺は、朱里が帰ってくるなり玄関で事情を問い質した。
しかし一向に答えようとしない朱里は、挙句「お兄ちゃんには関係ないでしょ!」と俺を睥睨して自分の部屋にこもってしまったのだ。

……ほら、朱里はもうお兄ちゃんのことなんか、どうでもいいんだ。
やっぱり迷惑だったんだ。
そうだよな。いつまでもお兄ちゃんお兄ちゃんって、ベタベタしていられないもんな。
俺だって行き過ぎたシスコンで朱里を不幸にしたくなんてない。

……わかった。もう互いに依存するのは止めにしよう。
近親相姦に耽溺なんてしたら、手かせ足かせも良いところだ。
良かったよ、自然とそういう流れになってくれて。
面と向かって終わりの言葉を告げなくて済んだのだから。

ああやって突き放された方が、未練も残らない。
……そうだろ朱里?
< 25 / 79 >

この作品をシェア

pagetop