愛は知っていた【完】
もう……もう、いやだ。
どうして俺と朱里は家族なんだ。どうして兄と妹なんだ。
どうせなら、もっと別な形で家族という絆を築きたかった。
おかしな話だ。兄妹だったからこそ、こうして朱里と親密な関係になれたというのに。

とうとう目尻に涙が浮かんできた時だ。
瞬間、朱里の顔が目の前まできていて、俺達を隔てるものは無くなっていた。
唇に訪れた柔らかい感触。そこから伝わってくる温かさ。
見開いた瞳から零れ落ちた涙が頬を濡らした。


「……ごめんね」
「あか、り……?」
「お兄ちゃんのこと好きなの。おかしくなっちゃいそうなくらい、大好き……」


ずっと我慢してた。こんなの駄目だって分かっていたから。
でもやっぱり我慢できなかった。
嗚咽を堪えて泣く朱里を俺は全力で抱き締める。

そんなの、俺だって同じだ。
なんだよこれ、なんで俺達想い合ってるんだよ。
兄妹なのに、結ばれてはいけない運命なのに……!


「俺も、朱里のことを愛してる」


何度も喉まで出かけていた言葉。
愛してるのたった五文字が言えなくて、いつももどかしさに苛まれていた。
やっと伝えることができた。
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