愛は知っていた【完】
しかし朱里に抱いたあの特別な想いには別れを告げたのだ。
そう自分に強く言い聞かせていると、また妙な虚しさに全身が支配されてしまいそうで、俺は下唇を噛んで首を横に振った。

結局この夏は近場のテーマパークに足を運び、一家団欒となり楽しいひと時を過ごした。
残りの滞在期間は観光をするとはしゃいでいた朱里に「またな」と手を振り、俺は明日の部活に備えてその晩普段より早寝をしたのを覚えている。
閉じた瞼の裏に朱里の笑顔が焼き付いて離れなかったのも、今思えば俺の決意がいかに仮初めのものだったのかを簡明に表していたのだ。
< 37 / 79 >

この作品をシェア

pagetop