愛は知っていた【完】
とにかくお兄ちゃんは私の理想の男性。
あくまで物心ついてから十年足らずな私による、ちっぽけな世界での主観に過ぎないけれど、お兄ちゃんが私にとって掛け替えのない存在なのは確かだ。

だから当然ショックは大きかった。
私は野球部のマネージャーを辞めた。
マネージャーを続けていれば、恋人同士になった二人のやり取りが嫌でも目に入ってくるだろう。

本当はお兄ちゃんが練習に励む姿を近くで見守っていたかったけれど、このままではきっと私はそこに幸せを見出す前に、現実を受け入れるのが辛いあまり居た堪れなくなってしまう。
今更監視染みたことをしたって、二人はもうくっついてしまったのだ。後の祭りなのだ。

そもそも、私はお兄ちゃんに自分の本心を打ち明ける勇気も度胸も持ち合わせてはいなかったのだけれど。
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